親子や高齢者が交流
私たちが新富町三納代の教職員住宅跡に「みんなの居場所 こぶたのおうち」を4月に
オープンさせて2カ月余りが過ぎた。場所はJR日向新富駅の南西部で、子育て中の
お母さんたちを中心に1日平均5、6人が利用している。
私は約15年前から新富町内で絵本の読み聞かせ活動を続けている。その一環で、
2004年には町内の自宅(現在は宮崎市佐土原町在住)庭にプレハブを置いて、
多くの人に絵本などに親しんでもらおうと文庫を開設した。
その後は読み聞かせボランティアの仲間たちと書店の片隅を借りて、読み聞かせ
イベントなどを実施してきた。
そうした活動を続けていく中で、人とつながることの大切さを教えられ、
気軽に立ち寄れて、誰かが待っている「居場所」の必要性を
感じていた。
4、5年続いた書店でのボランティアを解散することにしたとき、仲間の一人から
「こんな場所が私には必要」と言われ、決心がついた。
だが、場所がなかなか見つからず、諦めかけたとき、空き家を探してくれる人、
その空き家があちこち傷んでいたことから修復や清掃などを加勢してくれる人、
相談に乗ってくれる人がいて、勇気をもらった。
また、「本当にやれるのか。必要なのか」と迷ったり不安になったりしたとき、
住民目線で新富町の幸せを考える「明るい未来を考える会」に誘われた。
どんな新富町に住みたいかという議論の中で、「居場所」という言葉が
出てきた。
以前から「居場所」づくりを考えていたという保育士仲間の川上英理子さん(66)と
思いを共有することで、前に進むことができた。
「こぶたのおうち」は私のほか、娘を含む4人の留守番担当がいる。月曜―金曜の
午前10時~午後4時に開けている(留守番がいれば)。
赤ちゃんからお年寄りまで誰でも来てよく、おしゃべりしたり、お茶を飲んだり、
本を読んだり、思い思いに過ごしていい。
私は、ここを訪れた人が話を共有することで、気持ちが楽になり、ほっかりと
気分転換できて、一歩を踏み出せるようになればいいな、と考えている。
ただ、私自身が、「こぶたのおうち」の方向性を決めようとは思っていない。
ここに来られた人にこの場所をつくってもらえればいい、と思っている。
「こぶたのおうち」には日記帳を置いている。生後5カ月の娘さんと数回訪れている町内の
長友雅子さん(32)はそこに「時間を忘れてしまいそうなくらい幸せな時間でした。
・・・(娘を)色々な人に抱っこしてもらえて嬉しかったです」と書いている。
ほかの子育て中の母親との触れ合いが楽しいらしい。
30年間ボランティア活動を続けてきた町内の安藤佐代子さん(86)もときどき
訪れてくれる一人だ。「人間というのは人恋しくできている。お年寄りは
声を掛けられるのを待っている。こんなふうに人が寄って話すのはいい。
子どもはコミュニケーション力もつく」と彼女は言う。
人は自分の役割があると生き生きと生きていける。この居場所が、そういう役割を
感じ、自分の存在を確認できる場所になれば、と願っている。
特にお年寄りはいろんな能力や知恵を持っている。お年寄りに来てもらって、
それを子どもたちに伝えてもらいたい。手始めに梅干し作りやみそ作りを
教えてもらえるおじいちゃん、おばあちゃんを待っている。
執筆者・・・小見山真理子(こみやま・まりこ)1961年、宮崎市佐土原町生まれ。
奈良文化女子大卒後、保育士として新富町の八幡保育園に
5年勤務。自衛隊に勤める夫の転勤で県外へ。
96年に新富町へ戻る。佐土原町在住。54歳。
宮崎日日新聞 6月11日抜粋
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