私は東京都心に近い千葉県市川市で生まれ育ちました。そんま私が大学卒業後、
NPO法人「地球縁化センター」が主催する「緑のふるさと協力隊」という
一年間の農山村体験プログラムに参加しました。
派遣地に決まったのが日之影町でした。
日之影町は私の中の田舎のイメージを覆す、とても山深い山村地域でした。
山を切り拓(ひら)いて家や田を作り集落が形成され、人々は自然とともに
暮らしを営んでいます。協力隊として活動をしながら、町の農林業、
地域行事、伝統芸能などを体験しました。その中で培われてきた
技術や伝統、人と人の助け合いの精神を
学ぶことができました。
一年間という任期はあっという間に過ぎてしまいました。まだまだ、この地域のことを
知りたいと思い任期終了後、「集落支援員」として、
この町で暮らすことを決めました。
集落支援員とは住民から地域の歴史や風土、田畑や山林の現状を聞き取り、
地域の課題や魅力、将来この地域をどうしていきたいか、
などを話し合っていく仕事です。
日之影町は深い山々の中腹に点々と集落が存在します。多くの小集落が少子高齢化の
課題を抱えており、集落機能の維持が困難になっている所も少なくないです。
かなり深刻な現状にあることは確かです。しかし、私はそのような
集落を回って、同時に面白さも感じていました。
そこに暮らすおじさん、おばさんは昔から山や田畑を管理しそこで暮らしてきた、
暮らしのプロフェショナルです。私のような都会で生まれ育った若者には
想像できないような、知恵や技術を持っています。
驚いたのは、近くの山にある木を切って製材し、家一軒を自分たちの
手で建ててしまったことです。その家は今、町外、県外から来た
お客さんとの交流拠点施設として大活躍しています。
また、山菜料理や豆腐、こんにゃくの作り方など、都会では絶対にできない、
山村集落ならではの料理法も教えてもらっています。
山村集落には食べ物も燃料もあります。これらの資源を上手に活(い)かせば、
山村集落でもゆたかに暮らすことができるのではないですか。
私が今、地域の人たちを巻き込んで力を入れている活動は、①地域の特産こんにゃくを
加工・販売して産業化する②分城の空き家を改修した子民家を
ゲストハウスとして活用する③自分たちで整備した
「天の古道」(見立川中ー岩度神社間11㌔)の
イベント活用ーであります。
こんにゃく作りは「山にある資源を活かした新たな生業(なりわい)をつくろう」と
いう活動の一環で、加工場を追川上地区に設置し、「山寿ふれあいくらぶ」という
任意団体を立ち上げ、山村体験イベントを行っています。地元の
こんにゃく作り名人のおばちゃんたちが春の山菜まつりと
秋の収穫祭に合わせて作っています。
これかのイベントで好評だった「こんにゃく」は今後、
商品化して常時販売することを
目指しています。
ゲストハウスは昨年から農作業体験ツアーを企画して都会から参加者が訪れています。
天の古道では、、2010年から4月に初歩きイベントを開催、
県内外の50~60人が参加しています。
今後、人口減少がますます進行していく日之影町です。この追川上地区のように、
地元にあるものを見直し、新たな価値観で生業を創(つく)っていくことで
人口減少にブレーキをかけることはできないか、と考える日々であります。
宮崎日日新聞 2月12日より抜粋