宮崎市佐土原町上田島にある佐土原人形店の老舗「ますや」先代窯元の
岩切和子さんが12日、亡くなりました。94歳でした。町内の数少ない
人形作家として、約400年の歴史がある佐土原人形を
約30年にわたって作り続け、伝統を次代に引き継ぎました。
功労者の訃報に、関係者は「後継者の育成に励む」などと
感謝や伝統継承への思いを強くしています。
岩切さんは創業約160年の「ますや」5代目窯元です。もともと同市内で婦人服の
デザイナーをしていたが、45歳のころ、1947(昭和22)年から
約20年間休業していた家業を再開させました。
以来、伝統に女性の感覚を取り入れた繊細なひな人形や節句人形を創作しました。
1人で月に平均100体以上を手掛け、ひな祭りや初節句を
迎える家庭を喜ばせていました。
75歳のころ、弟の坂本兼次さん(79)に店を継がせました。岩切さんは
戦時中に夫を亡くし、子どもがいなかったため後継ぎとして坂本さんの
子どもを養子にしようと考えていた時期もあったといいます。
坂本さんは「姉は伝統を残したいという思いが強かった。
体力的にはきついが、今後も店を続けたい」と話します。
現在、町内の佐土原人形店は「ますや」と「陶月」の2軒のみです。
「佐土原人形伝承会」の青木幸雄会長(66)=同町=は
「岩切さんは時代に合った人形を作り、伝統を守ろうとしていました。
佐土原人形作りの担い手をどうにか育てていきたい」と話しています。
岩切さんは12日午後7時10分、老衰のため西都市の
特別養護老人ホームで亡くなりました。
(宮崎日日新聞 4月15日)